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「結局、実らなかったんだろう。その子の恋は」
「うん。彼の友達が、事件に巻き込まれたの。生死の境をさ迷って。今は、日常生活を送れてる。事件が起きた日。彼は友達と変えるはずだった。彼女が会いたい一心で、待ち続けてなければ」
「まるで、彼が側にいたら、友達は難を逃れたみたいな言い方だな」
「無事だったと思う。当時、居合わせた友人が、彼女について話題に出した時。学校の壁を素手で壊したって聞いたから」
「いや、いや、いや。素手で壁は壊せないから」
「彼の友人達が危険を感じたのは、確か。彼女を彼から力ずくで遠ざけてたし。その間に、転校してきた女の子に、彼を持ってかれた」
「…で、君は?」
「勇気を出して、挨拶を一回。本能が警告してた。彼に近づかない方がいいって。…もし、彼が友人達の勧めを無視してたら。事件に巻き込まれたのは、彼女だったと思う」
早いもの勝ちか、うだうだと悩んでいた。挨拶くらいは許されるだろうと、結論を出した。帰りに彼の名前を呼んで、「バイバイ」と言った。あれほど、勇気を振り絞ったことはないし。彼が返事をしてくれたときは、何にもかえがたい思い出だ。
彼が転校生と結婚すると発表した。あの女のやられた顔が想像できて、愉快だったし。転校生があの女を一喝したと聞いたときは、気が晴れた。
「彼は、一体、何者?」
「皆は、『障らぬ神に祟りなし』をもじって、神の部分を個人名に変えて噂してたけど」
「どこがいいの?」
「体内に翼を持っていて、片方だけだったけど。キレイだなって」
「は?」
負けたと思ったのだ。後に親友になる転校生に会った時に。彼女も体内に翼を持っていた。片方だけの。並ぶと一対になり、彼はこれを求めていたんだな、と分かった。感情は納得しなかったが。ちなみに、翼について、彼らの子供にしか話していない。
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