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「副キャプテン、渡部亨」
思わぬ指名に、反応が遅れる。
「はいっ」と答えた声が上ずった。
試合翌日の日曜日、決勝戦を観戦した後学校に戻っての全体ミーティングだった。
サッカーの本番は冬の選手権大会だとも言われているが、青南は公立の進学校だけあってインターハイ予選での敗退が三年生の引退のタイミングとなっている。
新体制のスタートとなるミーティング、すでに三年生の姿はなかった。
「昨日、試合の後、学年ミーで決めたんだ。受けてくれるか」
俺の目を見てそう言ったのは、つい今しがたキャプテンとして挨拶を済ませたばかりの長清先輩だった。
例年新幹部が二年生の学年ミーティングで決定されることは聞いていたが、当然二年生から選ぶものとばかり思っていた。
「はい」
力強く即答したが、脳内ではまだ混乱が続いていた。
とはいえ、了承以外の返事があるとも思えない。
「四月に入学したばかりの一年生幹部にして、頼りない二年だと思うかもしれないけど、みんなで全国に行くために最善だと信じて選んだ。一緒に頑張ろう」
その言葉を冷めた心地で聞く自分に多少の失望を覚えながら、周りの一年生に合わせて「はい」と大きく返事をした。
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