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雲が走る。
見る間に青空が広がり、陽射しが雨滴に飾られた紫陽花を煌めかす。
「晴れたーっ」
さっきまでどんより空と同じ表情していた貴女が歓声を上げて跳び跳ねた。
「晴れたね」
つられた私も満面の笑顔。
透明な傘が陽に焼けた手から零れ落ち、ふわりと翻って水溜まりに映る世界を背負う。
もう貴女は勝利を確信している。
沢山の人の沢山の期待を背負って、それをちっとも重荷と感じない貴女は笑う。
「勝つぞーっ」
「うん、勝ってね。金だよ」
明るく念を押すけれど、ねえ、本当は寂しいよ?
次の大会で一番になったら、貴女は私達の目の前から去って行くのだもの。
大きな街の有名な学校に引き抜かれて行くって。
だから、雨が続けばと考えた。
練習が出来なければ、結果は出ないから。
「2020年、この村に錦を飾ってやるーっ」
信じられない位のハイ・ジャンプ。
貴女は跳んで行く。これから未来へ世界へと。
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