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「ずいぶん症状が緩和しているようですが、何かありましたか?」
忠史を送ってきたデイサービスのスタッフが、報告書を渡しながら尋ねてきた。
「特別なことは何も……」
澤木は、ナミが忠史の性処理をしていることは伏せておいた。いくら介護の専門家とはいえ、理解されるはずがないし、下手なことを話して、ナミに迷惑をかけたくなかった。
ナミが来るようになってから、忠史の記憶が欠落する時間が短くなっているのは明らかだった。澤木が、ナミの来る日をカレンダーに赤丸をつけると、忠史はその日を意識するようになった。そして朝から時計を気にし、ナミが来るまでの時間を正しく言い当てた。
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