1476人が本棚に入れています
本棚に追加
カツカツと靴音が響く中、フロアに足を踏み入れた氷山は、机に置かれたパソコンの電源を入れるとコーヒーを落して卓上へ持って行く。
「あーあ、プログラマー見つかんねぇなぁー」
メール画面を見て、数日前に帰って来たカノンのメールの返信を見る。
〝お誘いはありがたいですが、企業のプログラムは、規則が多く私には向いていないと思います。
申し訳有りません。〟
「凪川冬音か・・・面白いヤツだったな」
携帯を取り出して、簡易メッセージを書き込む。
〝カノン!クルミ食いたくないか?〟
氷山のからかいのメッセージは、朝の時間だからか既読が付かない。
まあ、それも何となく解っていたが、このメッセにどう返事を返してくるかが楽しみでならない。
恐らく昼には活動を始めるだろうと始業の用意を終わらせた。
「氷山部長、おはようございます。」
続々と社員が入って来て営業部はすぐに満員になった。
5人しか居ない部署ではあるが、ここが氷山の戦場でもあるのだ。
「今日は、プログラマー探しの会議と、抜けた穴埋めにまわるから、用があるなら携帯な。」
そう伝えれば、それぞれに了解を反して、営業の準備に取り掛かった。
「氷山!会議っ!」
「はいっ!」
今日は、会社創立当時の三人で会議なのだ。
ひとりは、谷山勇(たにやま ゆう)幹部最高齢の38歳総括という名の企画部長だ。
身長が182cmで、高め。
銀フレのメガネを掛けてインテリ風。
もう1人は、瀬川煌(せがわ こう)35歳で、カノンと同じ178cmで唯一の既婚者で、この会社の社長。
そして、総括で営業部長の氷山の三人でこの会社を設立したのだ。
年齢は、バラバラだが大学時代に知り合った三人で作り上げた会社が、この
【 HITASE企画】ひたせきかく。
「よう、今日は早いな」
「いつも遅刻してるみたいに言わないでよー聖ちゃーん!」
その呼び名にヒクッと眉尻が上がる。
「ほら、勇・・・聖怒らせる前にアレ見せろ」
瀬川に促されて谷山が数名の名前と、プログラム歴などを書いた一覧が差し出された。
「・・・凪川は、ダメだったなら他当たるしかないだろ」
谷山に言われて、氷山が苦笑いを零した。
最初のコメントを投稿しよう!