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カツカツと靴音が響く中、フロアに足を踏み入れた氷山は、机に置かれたパソコンの電源を入れるとコーヒーを落して卓上へ持って行く。 「あーあ、プログラマー見つかんねぇなぁー」 メール画面を見て、数日前に帰って来たカノンのメールの返信を見る。 〝お誘いはありがたいですが、企業のプログラムは、規則が多く私には向いていないと思います。 申し訳有りません。〟 「凪川冬音か・・・面白いヤツだったな」 携帯を取り出して、簡易メッセージを書き込む。 〝カノン!クルミ食いたくないか?〟 氷山のからかいのメッセージは、朝の時間だからか既読が付かない。 まあ、それも何となく解っていたが、このメッセにどう返事を返してくるかが楽しみでならない。 恐らく昼には活動を始めるだろうと始業の用意を終わらせた。 「氷山部長、おはようございます。」 続々と社員が入って来て営業部はすぐに満員になった。 5人しか居ない部署ではあるが、ここが氷山の戦場でもあるのだ。 「今日は、プログラマー探しの会議と、抜けた穴埋めにまわるから、用があるなら携帯な。」 そう伝えれば、それぞれに了解を反して、営業の準備に取り掛かった。 「氷山!会議っ!」 「はいっ!」 今日は、会社創立当時の三人で会議なのだ。 ひとりは、谷山勇(たにやま ゆう)幹部最高齢の38歳総括という名の企画部長だ。 身長が182cmで、高め。 銀フレのメガネを掛けてインテリ風。 もう1人は、瀬川煌(せがわ こう)35歳で、カノンと同じ178cmで唯一の既婚者で、この会社の社長。 そして、総括で営業部長の氷山の三人でこの会社を設立したのだ。 年齢は、バラバラだが大学時代に知り合った三人で作り上げた会社が、この 【 HITASE企画】ひたせきかく。 「よう、今日は早いな」 「いつも遅刻してるみたいに言わないでよー聖ちゃーん!」 その呼び名にヒクッと眉尻が上がる。 「ほら、勇・・・聖怒らせる前にアレ見せろ」 瀬川に促されて谷山が数名の名前と、プログラム歴などを書いた一覧が差し出された。 「・・・凪川は、ダメだったなら他当たるしかないだろ」 谷山に言われて、氷山が苦笑いを零した。
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