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深夜1時・・・ シャキシャキと、ハサミが髪を切る音を響かせていた。 「んっとに、冬兄ぃは顔が良いんだから隠すなっ!あんな女の事なんか気にしないで、あっちこっちで女捕まえてきなよ!」 髪を切っている間、ずーーーーっと、こうやって文句を言い続ける妹は、現在モデルの仕事をしている。 名前は凪川春音(なぎかわ はるね)ちなみにモデル界では『 haru』はると名乗ってる。 「あのなぁ、春さんや・・・」 「嫌だ、アニキ〝ばーさんや・・・〟的な言い方しないでよ、オッサン臭い!」 そして、言葉では絶対に勝てない・・・ 「オッサン臭いは、ないだろ!くそーアイツは小動物扱いだわお前はオッサン扱いだわ、俺って一体なんだよ!?」 そうボヤけば、春の手がピタリと動きを止めた。 マズイ・・・ 「へぇ、アニキを小動物ねぇ?」 「う、うるさい!いいから早く切ってくれ」 妹は、勘が鋭いから人と関わるのを避けていた俺の変化に気付いたんだろう。 「目は出していい?」 その言葉にクッと息が詰まった。 「出しても、気持ち悪くないか?」 「あのね?私はアニキに嫉妬する位なのよ?そんな綺麗な目をしてる癖に隠すなんてホント勿体ない! それに、今日会う人は友達として一緒に居たいと思える奴何でしょ?」 やはり、見抜かれていた。 この感の良さを最初から信じていれば、良かったのに・・・ コイツだけは、結婚に反対だったんだ。 俺が傷付くと散々反対して一時は絶縁に近くなっていた妹。 人を見る目は凄く肥えているんだろう。 「友達に、してくれた」 「なら、隠す事無いじゃない」 「目も・・・見られた」 「・・・触らせたの?」 「いや、ちがっ、たまたま!ま、前髪邪魔くさそうだから掻き分けて・・・くれた・・・だけで・・・」 人と触れ合うのは家族も含め駄目になった。 だからこそ驚いたのだろう。 触れられた自分ですら、ダメになったのは気の所為だったかも知れないとすら思ったのだから。 「そっか、今夜よね?」 「へ?」 「会うのよ!」 そうだと返せば、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて良からぬことを企んで居るのでは?と思い至った所で手鏡が渡された。 「どう?アシメにしてみた」 元は美容師だった春はまだ現役でも、仕事をする腕はある。 ただ、モデルは今の時期しか出来ない貴重な体験だからと、一時ハサミを置いたのだ。
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