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「嘘・・でしょ・・」
手にしていた菜箸が大きな音を立てて床に転がった。
有希(ゆき)は、テレビに映る透(とおる)の顔写真を見つめていた。
透から貰ったエプロンの裾を両手でギュウッと握りしめる。
血の気が引いて立ち眩みがするため、二人用のダイニングデーブルの上に手を突いた。
女性キャスターの声は、有希の耳にはひどく遠く感じられた。
ただ、テレビ画面の下に
”会社員、駅ホーム下に転落した老婆を救い重症”
という白い字幕だけが、妙に現実感に乏しく浮かび上がっていた。
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