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支度をして食堂まで来ると、辺りはなんとも言えない静寂に包まれていた。
その原因は、俺たちに違いない。
周りの生徒の驚いた視線が、辺りを飛び交う。
「銀司さん、やっぱりこれ、ちょっとマズイ気が……」
「あ?気にすんなよ」
怖気付いた俺とは違って、銀司さんは本当にどうでも良さそうに券売機の方へ歩いていく。
ここの食堂は券売機にMainを翳し、食券を購入する仕組みになっているらしい。
請求は後で一括で来るらしいから、あまり調子に乗っていいものばっかり食べられないな……
「ん、あれぇ~?若葉ちん!やっほーい!晩御飯、食堂で食べるんだねぇ~!!」
耳に馴染んだアホの声が、少し遠くから聞こえて来る。
声の主を見つけ出すと、呼詠は笑顔でこっちに手を振っていた
「おう。呼詠も晩飯食うとこ?」
「そうだよ~ん!って、わぁ!!不知火先輩も一緒でしたか!!これはこれはぁ~!兄がいつもお世話になっております」
「……ん?あぁ、不和の次男か。泰智(タイチ)も一緒か?」
呼詠の敬語、初めて聞いたけど全然似合わねえな!
「そうですよ~!あ、兄ちゃん!こっちこっち~!俺の友達の若葉と、兄ちゃんの友達の不知火先輩だよ~!!」
「ぶッ、え、え?」
ねえ、呼詠ってなんなの?バカなの?アホなの?
俺の紹介はまだ良いとして、なんでお兄さんの友達である銀司さんのことまで紹介したの!?
思わず吹き出しちゃったよね!!!
そして、なんで銀司さんも呼詠のお兄さんも平然としてんの!?
「よう、銀司。と、西の次期当主さんね。俺の弟がお世話になってます。アホな弟だけど、仲良くしてやってね」
呼詠とよく似た目を細めて、お兄さんが笑う。
呼詠と違ってめっちゃまともそうなんだけど……
「もう!兄ちゃん!!アホは余計だよぉ」
呼詠が拗ねたように頬を膨らますと、お兄さんが呆れたように、呼詠の頭を撫でる。
「悪い悪い。気にするな」
気持ち良さそうに頭を撫でられてる呼詠と、満更でもなさそうなお兄さん。
俺は若干白い目で2人を見ながら、大人しく食券を買った。
別に無視はしてないよ。
そっとして置いてるだけ。
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