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「俺だって不知火先輩と仲良くなりたい~~!」
またもや手足をパタパタさせながら口を尖らせる呼詠の頭を、泰智先輩が慰めるように撫でる。
「呼詠には俺がいるよ」
「クゥン……兄ちゃん好きぃいい!!!」
ガバッと泰智先輩に抱きついた呼詠を、泰智先輩は慈しむように撫でている。
わかった。
この2人、馬鹿なんだ。
すっと2人から目をそらすと、反対に銀司さんと目が合う。
「気にするな。不和の一族は、狂ったように仲が良いと有名なんだ。いつもの光景だ」
銀司さんは当たり前のようにそう言って、俺に両手を広げている。
ねえ、待って?
なんでこの流れで俺に手広げてんの?
なにそのいつでも来い。みたいなやつ
え、俺頼んでないよね?
「いや、行かないですよ?」
大体あなた、不和の一族じゃないでしょうが。なんてノリだよ。
「そうか」
若干残念そうにすんのやめろよ!!!
そして目の前の不和兄弟!!!!
銀司さん可哀想……みたいな顔で俺を見るなよ!!
特に呼詠!!!
そんな非道な人間を見るような目で俺を見るな!
「大変お待たせいたしました。Aセットを2つ、Bセットを1つ。Cセットを1つお持ちいたしました」
俺には、このウエイターさんが天の使いに見えた。
いや、きっと彼は神様に違いない。
「わーい、美味しそう!!見て兄ちゃん!!お味噌汁すごいよ~」
お味噌汁の何が凄いのかわからないが、みんなの視線が運ばれてきたご飯に移る。
Aセットがチキン南蛮とスープのセットで、Bセットがお味噌汁付きの生姜焼き定食。Cセットが、同じくお味噌汁付きの唐揚げ定食だ。
ウエイターさんがBセットを呼詠の前に起き、Cセットを泰智先輩の前に置く。
そしてAセットが、俺と銀司さんの目の前に置かれた。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
ゆっくりお辞儀をするウエイターさんに軽く頭を下げ、俺はご飯を食べるのに徹した。
途中で呼詠が楽しそうに話したりしていたが、俺は軽く頷きながら、話を聞く側に回っていた。
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