23人が本棚に入れています
本棚に追加
「う、わあ...悪趣味な学校」
坂道を登り切った俺の前に現れたのは、グルリと辺りを一周、高い塀で囲まれた大きな建物だった。
木々に囲まれて聳え立つその姿は、まるで監獄の様だ。
ガコッと空いた門の入り口には、【朝霧学園】の4文字が浮かび上がる。
その門から伸びる一本の街路樹を辿っていけば、あの校舎に辿り着くらしい。
「幾ら何でも、遠すぎだろ」
一本道だから幸い視界に捉えることは可能だが、そこに辿り着くまでの距離を考えると、足がピクリとも動かなかった。
背中に背負っていたリュックが急に重たく感じられ、大きく息を吐くと、街路樹を1人の男が歩いてくるのがわかる。
なんだ、あの人
ピシッと身体を硬くして警戒を強めると、前から歩いてきた男と目が合う。
揺れるように靡く短い紫の髪の毛と、褐色を帯びた肌が、太陽に照らされてじわりと動く。
赤みを帯びた瞳は、まるでこの世の物じゃないみたいで、酷く身が縮むのが自分でもわかった。
その姿は人間とこれっぽっちも変わらないが、【人間じゃない何か】であると、ちっぽけな脳が俺に警告をしてくる。
どうか目の前に立つこの人が、優しい妖怪でありますように。
最初のコメントを投稿しよう!