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「…やっぱり、どう見ても普通の女子高生だよ。」
ふさぎこむ私の背後から幻聴が聞こえる。
「でも、確かに『聴いた』話では越寺梅子と…。」
ああ、私の名前だな。
私が何をしたというのよ?
聞いたこともない男女の話から私の名前が出る。
「当て字なだけだろ?
彼女は無関係じゃないのか?」
「そんな都合のいい偶然があるわけないじゃない!」
「世の中、自分と似た人間がどこかにいるというし…名前だって同姓同名がいるんだよ?」
「…とりあえず、まずは仕掛けてみよう。
もし、間違ったら処分はよろしく。」
「分かった。」
ああ、変な幻聴がはっきり聞こえるわ…。
ガタッ!
席を立つ音もするし。
ザワッ!
一瞬、全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
足が、やたら重く感じて動かない。
(嘘…でしょ…?)
紅茶の飲み過ぎかな?
それとも、ケーキの食べ過ぎかな?
身の毛もよだつ恐怖。
不幸のどん底など生ぬるい、尊厳もクソもない雨ざらしより冷たい場所に否応なしに放り出された気分だ。
ともあれ、本能がここから逃げろと告げている。
しかし、もう捕まっているのだからそんなことは許されない。
私はどうなるのか分からないが…神様とは私からあらゆるものを奪うのがお好きらしい。
「♪♪~♪♪♪~~♪♪」
その時、遠くから携帯電話の着信音が聞こえた。
着信を受ける私とは別の年頃の女子の声がする。
「えっ、彼女は無関係?
ああ、またやっちゃった。」
何をやったか知らないが、悪びれる様子はない。
こっちは、死の恐怖を感じたというのに。
「まぁ、死ななかったからいっか。」
「帰るぞ。」
足音が遠ざかっていく。
足音が遠ざかると、すぐ足の自由は戻ったが…私の足は恐怖でしばらく凍りついていた。
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