生はまこと抗拒に尽きる

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  藤原さんは、 悩みを人に打ち明ける タイプじゃない。 おかしなことに、 立場だけ見たら 私と藤原さんは 恋敵のようなものなのに、 彼女に対して 妙な親心がわいてくる。 けれど一見 関係のない私には、 なにもしてあげられない。 考えただけで、 私にまでいやな倦怠感が まとわりついた。 桃さまの指先が、 私の肩に触れる。 「よけいな心配させました」 「いえ。 今、藤原さんの心配を」 「……あなた、 意外とお人よしなんですね」 クッ、と 低く押し殺した笑いが、 私をくすぐる。 言葉にせずとも 「可愛い」と言われたようで、 私はそうとう 自惚れの強い女だな、 と恥じ入った。 .
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