一回表 …西条編

3/8

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「虹!頼んだぞ!」 バッターボックスに向かう夏木に飯島が声をかけると、夏木が振り向きながらベンチに向かって逆手でVサインを出した。 日に焼けた顔に白い歯が眩しい。 ベンチに居る全員が、青春と云う煌めきの中の住人だが、ビジュアルに関して言えば夏木以上に輝いている者はグランド上に存在していなかった。 先頭打者である篠山の、筋肉バカは伊達ではない。 かつてはパワートレーニング一筋だった男が、この一年間はウェートを落とし、スピード重視のトレーニングに切り替えた。 野球に必要な筋肉を鍛え上げ、無駄な筋肉を削ぎ落とした細マッチョな身体と、男気に溢れる性格。 当然、頼りになる男だし、二番バッターの夏木に至ってはチーム一番の野球バカだ。 「大丈夫だ。虹は確実に決める」 確信めいた西条の言葉と同時に夏木が送りバントを決めた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加