一回表 …西条編

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三番バッターの郷田が、初球のボール球に手を出してライトフライのアウトになってしまった。 表情を変えず西条が右バッターボックスに入った。 左手にバットを持ち、一旦、腰の横までバットを持ち上げると、右手で引き抜くようにしてバットを構えた。 その仕草は野球と言うよりも、剣道で竹刀を構える仕草に近いものだった。 実際、西条は左利きなのだが右打ちであり、その理由が右打ちであれば刀と同じ持ち手でバットを握れるが、左打ちだと逆手になってしまうからだった。 西条にとってバットは刀と同じ物なのである。 バッターボックスに入った西条が、ベンチに視線を向けた。 食い入るように自分を見つめるチームメイト達。 自分が打つことを信じて疑わない飯島の視線が心地良かった。
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