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車のガラス越しに、自分の顔が映る。
黒い長い前髪の下に、黒ぶちのメガネ。そのメガネの奥にあるのは・・・不安げなスカイブルーの瞳。
小さい頃は、このスカイブルーの瞳が、周りの子と違うからと、よくいじめられていた。
人との違いを感じさせられないようにと、前髪を伸ばして、メガネをかけて、この瞳を隠してきた。
カラーコンタクトも考えたけれど、乾燥しがちな僕の目には合わなくて、結局、この大きな黒縁メガネで隠している。
「病院が見えてきたよ。」
抱え込んでいたバッグを抱きしめる。
頭に浮かぶのは、小さい身体で、忙しそうに働いていても、どんなに大変でも、いつも笑顔を見せてくれた母。
コロコロと表情を変えて、かわいらしい母が。
今、目の前のベッドで。
眠っている。
「母さん・・・・」
その顔は、安堵の表情を浮かべて、眠っている。
「母さん、起きて。帰ろう?」
ねぇ、母さん、帰ろう?
「う、うわぁぁぁぁぁっ!」
僕は、母さんの小さい身体を抱きしめて、泣いた。
僕が高校1年の、体育祭目前の秋のことだった。
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