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まったりと自らの研究に取り組んでしまっていた科学部だが、図書室の謎を忘れたわけではない。3時となってしまったが図書室へと向かった。一階は二階以上に湿度が多い感じがして、どことなく黴臭かった。
「悠磨」
しかし図書室の中は冷房のおかげか快適で、湿気もない。桜太はカウンターで読書に勤しんでいた悠磨に声を掛けた。
図書室の中は自習する三年生が何人かいるだけで空いていた。図書委員の主な仕事である貸し出しはあまりないらしい。
「おっ、科学部。次はここになったか」
悠磨は嬉しそうに顔を上げた。丁度いい暇潰しがやって来たと思っているのだ。その悠磨が読んでいた本はヒッグス粒子についてであり、どうにも同じ変人臭を感じてしまう。しかし桜太がどう追及しても悠磨は同類であることを認めようとしなかった。
「そうなんだ。本が落下するっていうのは物理現象だろ?だから全員が興味あってさ」
そう言って桜太がメンバーを紹介しようと後ろを振り向いたが、科学部のメンバーは勝手に読書に出かけてしまった後だった。辛うじて残っていた芳樹の手にも本が握られている。ただ単にすでに発見して戻ってきただけらしい。ちなみに持っている本はカエル図鑑で、まったくぶれないチョイスである。
「大丈夫か?」
呆然とする桜太に悠磨は気の毒になっていた。新入生を獲得して部を存続させたいとの思いはどこに行ったのかと心配にもなる。
「いつものことだ。さっさと問題に取り組まないと回収不能になる」
芳樹がフォローではなく手遅れと取れる発言をした。しかも芳樹の目がカエルに釘づけとあって妙な説得力だけはある。
「問題の棚はあっちだ」
なぜか悠磨まで危機感を覚えることとなり、早速案内をするためにカウンターから出た。それにここに科学部が来たというだけでは面白くない。現場に行くまでにメンバーを回収するという手間があるが、それは目を瞑るべきだろう。
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