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「ああ。この図書室の本はどこもキャパ以上の蔵書があってさ。たまに返却された本の関係で入らないんだよ」
そういう事態には慣れっこの悠磨が助け舟を出した。おそらく優我が読書に夢中になっている間に誰かが本を棚に戻したのだ。
「ほら、入ってたんだよ。まあ、せっかくだから借りて帰ろ」
仕方ないという体を装っているが、優我は嬉しそうだ。しっかりと本を小脇に抱えて合流してくる。桜太が何の本かと覗くと、物理学者のボーアについて書かれた本だった。本当に果てしなく量子力学を追い駆けている。
「つまりここの本棚はいつもぎゅうぎゅう状態なんだな?」
莉音が閃いたとばかりに質問する。
「ええ。そうですけど、それはどこの本棚も同じですよ。ここだけで落下する理由にはならないかと」
悠磨は困った顔で答えた。当然のように悠磨もそれは考えたのだ。しかしそれだけでは理由にならないのである。
「ふむ。圧力のせいだけではないのか」
莉音は残念といった調子で頷いた。
「そもそも圧力で飛び出すのは無理ですよ。本には弾力性がないですし」
桜太も考えてみたが、どうにも本が飛び出す理由は思いつかなかった。
「他の原因として挙げられるのは歪みですね。一見真っ直ぐでも歪んでいる可能性はある」
楓翔は言いながらズボンのポケットからメジャーを取り出す。そのメジャーは前回からの教訓なのだろう。持ち運びも便利な小型のものになっていた。しかも水平器付きというこだわりも発揮している。
「そうだよな。圧力だけでは無理でも加速がつけばいいかもって、あれ?」
頷きつつ棚を丹念に確認していた桜太はあることに気づいた。
「どうした?」
何か解ったのかと悠磨が期待する。
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