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「あのさ。こっちとそっちって別の棚だろ?どうして仕切りとなる板がないんだ?」
桜太は化学と物理の境目を指差した。本があるせいで横に見ていては解り難いが、ここに境があることは上の段を見れば解る。上にはちゃんとしきりとなる部分が存在するのだ。
「本当だ。これ、別々の棚だよ。独立していないとおかしいのに一体化している」
上から下までしっかり確認した迅が興奮して叫んだ。すると亜塔のげんこつが飛ぶ。
「いっ」
「図書室では静かに」
こういうところだけ常識人の亜塔だった。しかし叫びたくなる気持ちは解る。本来なら必要なものがないのだから驚きだ。迅は頭を擦りつつも自分が悪いと自覚しているからか抗議はしなかった。
「言われてみればそうだよな。これって、本棚の端が消えているってことだもんな」
これには図書委員の悠磨も動揺を隠せない。今まで問題がないと思い込んでいた棚にまさかの問題点発覚である。
「ということは、この棚って本の重さと圧力でバランスを保っているのか?端を切り取った奴も全部抜くとやばいと思ってか、所々残しているし」
莉音は視線をさ迷わせたが、無事な棚が見つからない。この壁伝いの本棚はこれで一つと言いたげなほど一体化してしまっている。
「地震が来たら終わりってことね」
あまりに常識外れなことに千晴は冷静な突っ込みしか出来なかった。しかしその言葉を聴いた男子たちはじりじりと後ろに下がる。ここで本に埋もれて圧死だけは避けたい。
「これは本が勝手に落ちる以前の問題だな。もしも本が減ることがあれば棚が崩壊してしまう」
状況をまとめた亜塔の言葉に、全員黙って頷くしかない。それにしても本が勝手に落ちるのは崩れる前兆だろうか。
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