第1章

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「だ、大丈夫です。蔵書数からしてすかすかになることはありません。全校生徒が貸し出し上限の五冊借りたとしても4050冊。蔵書はその倍近くの8000はあります。すかすかになる事態は来ません」  咄嗟に計算した悠磨はさすがだ。理系の本領発揮である。しかしこれはこれで改善しなければならない問題となった。補修するか買い直してもらうかしなければならない。 「取り敢えず、どうして本が勝手に落ちるかを検証しよう。これだけ無茶なことをしているんだから歪みはあるはずだ。それに、こうなると本が互いを支え合っていることもポイントになるだろう」  真っ先に問題に戻ったのは芳樹だった。やはり普段から異常な奴らをまとめようとの努力をするだけあって、異常事態に強い。 「なるほど。支え合っているというのに抜くことで力が分散してしまうわけだな。それが落下に繋がると」  莉音は言いながら本棚に視線を走らせた。今は落ちていないものの、抜いたら落下しそうな危ない場所が何か所か見つかる。 「でもさあ、抜いただけで落ちるとなると、抜いた奴が気づいているはずだよな」  桜太はどうにも腑に落ちない。 「そうだよな。抜いた奴は必ず現場を目撃しているもんな。落下すれば音もするし。入れて新たな圧力が加わって飛び出すにしても、現場には誰かいるはずだ」  そんな指摘をする楓翔の頭の中には地震のメカニズムだけが浮かんでいた。圧力が加わって何かが起こる。まさに地震と同じだろう。特にプレートで起こる地震は跳ね返って起こるものだから、飛び出すという今の状況と似ている気がする。 「ううん。これは検証実験するしかないな。結局はどうやって落ちるかが解らないとどうにもならない」  さすがに数学的手法は無理と判断し、莉音が実験を提案した。そもそもどうやって落ちるかが解らなければ何の数値もない。
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