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雨宿村の神社には雨を降らす巫女がいる。私のことだ。
私が外出すれば、必ず雨が降る。この体質のせいで友達はいないし、陰で悪口を言われている。
「……好きで雨の巫女になったんじゃないもん」
嗚咽は雨の音がかき消した。
「すっげー!雨だー!」
前から明るい声がした。金髪ポニテの少女が飛び跳ねている。
「あれ?キミ泣いてるの?」
少女は私の顔を覗き込んだ。
「……私は雨の巫女。私が外出すると必ず雨が降るの。私に関わらないほうがいいよ」
「おお!キミのおかげだったのかぁ!」
「え、な、何?」
「私、隣の村の晴れ女なの。今まで雨を見たことなくて」
「私の真逆……」
「雨を見せてくれてありがとう!」
胸がかあっと熱くなる。
そんな嬉しいこと、言われたことない。
気づけば雨は止んでいた。
「あ、晴れ!」
彼女は傘を投げ捨てた。
初めて体験する雨上がりの空気が優しくて、私たちは笑った。
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