一話

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スマホのツイッターのフォロワー数が10億を越えた、と矯正器具が上下に装着された歯をむき出しにしてルカに見せてくる。 ルカの胸のつかえもなくなり、気持ちが上向く。 一行はドイツからイギリスのビックベンへの巡礼を行うはずであった。 ルカが明日の準備の為、英国支部の老神父へ連絡をとった時に大変急いだ口調で神父は話した。 神父は人格者で名が通っており、ルカにも温かな心で接し、年の離れた友人となろうと握手をしてくれた。 ホテルのロビーは騒がしく、チェックアウトの専用列が出来上がっていた。  物々しい様子にルカは困惑する。  しかしその理由は電話口のルロイ神父が教えてくれた。 「ルカよ、今英国では呼吸器官が不全に陥る未知の感染症が大流行しているのだ。もう、ロンドンでは高きも幼きも貧しきも老いも平等に脆弱になっていき力つきている」 「そんなばかな!」  ホテルのロビーでチェックアウトした中年女性がルカの声にびくりとした。 「本当だ、友よ。もうロンドンの人口の3割が罹患している。黒死病の再来だ」 ごほっと咳が続き、ルカはルロイ神父も感染しているのかもしれないと感じた。 「そうですか……。でしたら、私は今すぐ大教皇へ報告し巡礼の中止を伝えます」 「それがよかろう。今国の医療機関が全力を上げて原因究明に努めておる」 「ルロイさん、あなたは?」
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