一話

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「さあわしにはさっぱりじゃよ。だから、退院したら旅費を稼いで、アンナ様の家に訪問するつもりじゃ」 私財をほぼすべて避難民に与えた好々爺は大声で笑う。 「よくわかりませんね」 つられてルカの頬も緩む。 「よくわからんのが真理かもしれんの、ハハッ」 「そうかもしれませんね。すみません……私はそろそろ……」 「もう出発の時間かの。……そういえば、アンナ様と最後にどんな話しをしたんじゃ?」 「秘密です」 ルカはニカッと歯をむき出しにして笑い、失礼した。 悠々と病棟から出る彼は新天地への期待にワクワクしている。 財宝の在処を示した地図を片手に、宝島に乗り込むような絶妙な高揚感は小さな福者から得られたようにルカには感じられた。   ――カンザスに戻ったらしたい事?今のママにぎゅっと抱きしめてね、正直に話すの。 ……みらいのゆめー!?うーん、作家さんになりたい!元気になれる本を書きたいの。 んで、ルカさんの夢が叶ったらその事を本にするんだールカさん、約束だよ――
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