一話

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夢を見た半年後のアンナは6歳になり、教国により500年ぶりの『暫定福者』認定を受ける。 福者は死後1度奇蹟を起こした者を言い、聖人は2度起こさなければ聖人とは認められない。 『暫定福者』は生者で一度教国が認めた奇蹟を起こした者に、2年の期限付き巡礼を行う制度だ。 『暫定福者』の制度自体は古代ローマのディアドコイ期に活躍した、清貧の貴人ヨーゼフを始めとするが、ここ数百年は例がない。 まれにもまれな事例を一般のアメリカ片田舎の少女が適用される事態に、世間は湧きに湧く。 来年入学する学校を特例で休学し、アンナは2年の巡礼を開始する。 しかし、信じられない出来事ばかりで未だ夢心地なアンナは、教市国内のスイートホテルで、ふかふかのベッドで自分の手をじっと見つめ、不安になっていた。両親とは離ればなれだ。 そんな中、ドアのノック音が聞こえ、予定通りアンナはドアを開ける。 アンナのお目付け役兼世話役のルカが見下ろし立っている。 おでこにかからない程度の金髪と24歳の年齢にしては老けた顔付きは、大教皇の侍従からくる、重篤なストレスによって縁取りがされていた。 「アンナ様、明日からの巡礼について打ち合わせをもう一度確認致しましょう」     「え?ルカさん、キャドバリーのチョコは?」 アンナはスマホでツイートしている。  「持ってきておりません。恐れながらアンナ様、明日の巡礼について再考の程よろしくお願いいたします」 「えー!ケチー。後ルカさん、後の事はなに言ってるかわからない」 難しい言葉の羅列にアンナは不満顔だ。 「失礼承知の上申し上げますが……明日のアイス巡礼はお辞め下さい!」 「やだ」  31アイスクリーム全店舗の買い占め及び無料配布。 胃がきりきりとむかつくルカであったが、このアンナの巡礼においてまだほんの序の口に過ぎない事は知らなかった。
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