一話

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2 奇蹟は奇蹟を呼ぶ。求められるがままに。(聖なる奇蹟 P553)  「わー、夢みたい。こんなにホッピングシャワーが食べられるなんて!ブロードウェイってこんなににぎやかなんだ!」 「ええ。そのようですね」 教市国からNYへエコノミーで向かい、31アイスNYタイムズスクウェア前支店でアンナはホッピングシャワーをスプーンで掬い、満足そうにほうばる。 店内はアンナとルカ、店員の3人しかいない。 店外では暫定福者を一目見ようと人垣が警備員に指定されたライン前で押し合いへし合いしていた。 観衆の姿を見て気の毒だとルカは思い、たしなめる風にアンナに目配せする。 「ルカさんも食べる?何味がいい?」 「ありがたい申し出痛み入りますが……」 「敬語は辞めてっていったじゃない!」 ぷんぷんと怒るアンナ。 ルカは答えに窮する。 ここでこじれては後々の巡礼に響く、今は大人しく言う事を聞くしかない。 それに、この小福者の望みはたくさんあるだろう。 まだまだ。 「でしたら、食べます。レモンソルトを下さい」 ルカは顔面蒼白な店員に注文する。 「レモンソルトはないです……」 「ちょっとメニューを見せて下さい」   いつのまにかアイスを完食し、ひょこっとルカの股をくぐり抜け一緒にメニューをメニューを見ているアンナは素直に言った。 「ルカさん……もしかして、31来たの初めて?」 「ええ」 ここでアンナはするりと地雷を踏む。 「なんとなくだけどね……ルカさん、もしかしてアイス屋さんに来たことなかったり」 「そんなバカな。幼少の頃、一度だけパウロ枢機卿に買っていただきましたとも」 現在の大教皇から恵まれた大切な物だ。忘れるはずない。 
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