一話

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「そうなんだ……よしっ。店員さん、ルカさんに一番おっきいホッピングシャワーをトリプルで!それと」 とアンナは振り返って唖然としたルカを命じる。 「ルカさん、お店のアイス外の人達に全部あげて。他のお店も同じ事して!」     「どうしてそのような真似をするんですか?」 「だって、暑そうじゃない」 あっけらかんとした表情で不思議そうにアンナはルカを見つめている。 ただちにルカは方々の教国支部に連絡し、買い占めたアイスをけが人が出さない様細心の注意を払って無料配布する旨を伝えた。 暫定福者の命に従ってという言葉を付け加えて。 苦々しい思いで、電話を切り上げる。   ルカはアンナの目の前で電話をかける振りだけして誤魔化す事もできた。 だが、素朴に奉仕をする彼女に、心動かされた者もいた。 あえて多少の損害が、教国の財政に発生しようとも目をつぶった。 同時に、小福者の巡礼自体が教国の客寄せ兼プロパガンダ目的でもあった。 後々ニュースになり、教国への実入りが増える事を考えると、大教皇側にも十分なリターンは得られる可能性が高い。 後の巡礼にも彼女のモチベーション維持が重要になってくるから、ここは素直にしておいた方が良いとルカは判断した。 尚、大教皇へは巡礼の権限と責任すべてを委譲されている。 巡礼地で不評を買い教国の権威を落とす真似をすれば、何かしら理由をつけルカかアンナを破門にするかもしれない。 そこまで重い処分でなくとも、巡礼は直ちに終了する。   しかし、この時の判断でアンナは他にやりたい事をしても平気だと合点し、アンナ一行はグリーンランドへ流氷を割りに行く事となった。
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