一話

7/16
前へ
/16ページ
次へ
ママもアンナをこんなふうに泣いてる時は抱き締めてくれた。 今のママにはじゃまになっちゃうからできない。 アンナの事で教会に行ったり、疲れてるみたいで……。 ママ、ごめんね。 聖なる痕が生まれた時、一番にママのとこへ行けば良かったのに。 ごめんね。 その場にいたルカ以外の人間は、きっと彼女を天が遣わせた天使だろうと思ったに違いないが、ルカには単なる年相応の子供にしか感じられなかった。 アンナの思いも誰も知る事はなかった。 その後、すぐに流氷割りの専用客船で誰が教えたかわからないがタイタニックの真似をしていた。  日も暮れグリーンランドへの巡礼が終わり現地のホテルへ戻ると、アンナはまたわがままを言う。 自作したホットレモネードを宗派を越え、国中の人間に配りたいとのたまったのだ。 意気は良しだが、3万人を越えるグリーンランドの国民すべてにレモネードを自分の力で振る舞うなんて正気の沙汰ではない。 ルカもさすがに反対し、アイスの時と同じ対応をする事となった。 アンナはむくれ顔をしていたが渋々了承する。 「それじゃあ、ルカさん。ホットチョコレート、みんなにあげて。それか何か温かい飲み物でもいいから」 「かしこまりました」 「……ルカさんは何飲みたい?」 「コーヒーでいいです」 対応に慣れたルカは即答する。 「じゃあ、コーヒー入れてくる」 「危ないです、アンナ様」 「大丈夫、電気ポッドだから火は使わないよ。ママの真似するだけだから大丈夫!」 アンナはごく当たり前にルカの分も用意する。実はルカには新鮮だった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加