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4 笑いと嘆きは神に近づく神聖な行為であるから、私は楽しい時は大笑いし、辛く苦しい時は大泣きする。(聖なる奇蹟 P413)
ルカは孤児だった。
修道院と神学校しか知らない彼にとって、自分の物という概念がどこか抜け出ている。
緑色のプラスチック食器は誰の物でもなく、みんなの物。
所々、汚れの目立つ指紋がびっしりついたグラスも神学校を卒業しても自分の物にはならなかった。
だからこそ、今の現状に表面ではアンナに反対するものの本心ではルカは嬉しがっていた。
大人になると、素直に言わなくてもやり過ごせるが傷はいつまでもふさがれない。
グリーンランドの神父も、ああまでして感謝を示していたのだから他の国の神父や周辺住民に何か思う事もあったのだろう。
辺境の地で、不毛に近い布教と隔絶された世界での生活。
自分を閉じこめ我慢していたはずだ。
そう考えルカはハッとする。
重篤なストレスがなくなっている。
ならもしかして、彼女は本当に……。
椅子に腰掛け、一人物思いに耽っているルカにアンナが大声を出しながら簡易キッチン室からやってくる。
「ちょっと、ルカさん!コーヒーってインスタント以外の奴ってどうしたらいいの!?」
いや、苦いコーヒーが嫌いでドリップ式の入れ方も知らない彼女は普通の6歳の女の子だ。
ついでに言えば、ルカがアンナに慣れただけでストレスの元凶はアンナだった。
だが、表に出てこないストレスを晴らしてくれたのもアンナだった。
「自分で入れるので結構ですよ。アンナ様はホットチョコレートでよろしいので?」
「マシュマロも入れて!今日はまだ夜じゃないから……カンザスよりじさ?で暗くなってないからいいでしょ!」
「かしこまりました」
本当に恐れ入る。
飛行機を乗り継いでの長旅の労苦を感じさせない元気に、わずかながらルカは元気になる。
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