Prologue

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「好きです・・・ つ、付き合ってください・・・!」 「え・・・?」 その告白は、あまりに唐突だった。 IH予選前の5月末、俺は学年一モテている女子から告白された。 真夏のような太陽が差し込む放課後、体育館での出来事。 でも、その頃は正直、恋愛なんてどうでも良かった。 「すいません、俺、他に好きな子がいるので」 自分でも驚くくらい、嘘の言葉がスラスラと流れるように口から出てきた。 今考えてみれば、冷たい断り方だったと思う。 でも、その頃の俺にとっては、バレーが何よりも大事だった。 学校なんて、バレーがしたいが為に行っているようなものだ。 それから2ヶ月程たった頃だろうか。 スパイク練習中に、今まで感じたことのないような激痛が、右膝に走った。 たまらずその場に座り込み、皆が駆け寄ってきたのを覚えている。 マッサージやアイシングをしてもらっても痛みは治まらず、俺は救急車で搬送された。 それからの記憶は、思い出せない。 思い出すのを、自分自身が拒んでいるせいかもしれないけれど。 ただ、記憶の証拠は残っている。 ーーーーー二度と飛べなくなった、右膝が。
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