第1セット

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「・・・」 私、綾瀬夏瑚(あやせ かこ)は、今年から夢の台高校の一年生。 昨日の入学式を経て、今日は登校2日目。 ワクワクとドキドキで胸がいっぱいです。 それはそれでいいんだけど、私には重要な課題がある。 私は、人見知りが激しい。 自分から友だちを作れた試しがない。 友だち、できるかなー・・・ せっかく高校生になったんだから、人見知りを克服するチャンスだと思う、けど・・・ 「夏瑚おはよー!!」 「あ、おはよ・・・」 人が真面目に悩んでいるのに、空気を読まないで朝から飛びついてきたのは、私の親友・小石麻璃(こいし まり)。 でも、今年は麻璃と同じクラス。 別れなくて良かった。 「あんたそんな暗い顔してたら人が寄り付かないよ?」 「余計なお世話だよ」 麻璃の言う通り。 朝から暗い顔なんてしてたら損するだけ。 「夏瑚、部活入れば?」 「部活かー」 「一緒にバレーしようよ!」 「何回も振ったのに」 麻璃の粘り強さはさすがだ。 私は中学の時からバレー部に入らないかと誘われ続けている。 今までに何回振ったか分からない。 「バレーは楽しいよ!」 「運動神経悪いし」 「体育5なのに?」 しまった、痛いところを突かれた。 生まれてこの方、運動神経には恵まれている方だと思う。 だけど、バレーボールなんかして、私に何か良いことがあるんだろうか。 「バレーは結束力の強いチームが勝つの」 「・・・うん」 「だから、自分から仲間にコミュニケーションを取る必要がある」 「・・・だから」 「だから、人見知りを克服するチャンスだと思うんだ」 “人見知り克服”、か。 いずれどうにかしなければいけない問題だ。 この際、麻璃に乗っかるのも手かもしれない。 「体験入部なら、する・・・」 「よし!じゃ、放課後ね!」 満面の笑みを浮かべた麻璃は、トイレ行ってくるねーと言いながら向こうへ行ってしまった。 そして、遂に放課後。 高校の4月の放課後と言えば、あれだ。 「バスケ部入りませんかー」 「吹部も楽しいよー」 新入生の勧誘。 廊下は、各部活動の主将やら部員やらで大賑わいで、一人通るのもやっとだ。 麻璃はジュニアのころからバレーをしていて、全国大会にも出場したことがある。 高校に進学するときも、推薦を何個かもらっていたらしいけど、すべて私立高校からだったので、経済的な理由で断ったと聞いた。 夢の台高校は地元では有数の進学校だ。
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