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声をかけたい。 その気持ちは日に日に増していく。 ここに通い始めてもう3ヶ月。 私の存在くらいは知ってくれているはずだ。 貴方の私に対する認識は、どんなものだろう。 毎朝図書館に来る女の子。 きっと、それだけだろう。 それだけで良い、今は。 今は。 話しかけたい。 声を聴きたい。 貴方は、どんな声で笑うの。 どんな表情で笑うの。 そんなことを思っていると、顔が赤くなっているような感覚がした。 私はそれを、文庫本で隠す。 隠す気なんて、ないけれど。 きっと貴方は、私がこんなに貴方を思っていることを知らないんだろうな。 …日差しが眩しい。 そしてまた、8時30分を示すチャイムが鳴る。 小さく、ため息をつく。
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