第1章 前触れなどなく

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紙をめくる音が聞こえる。 誰か本でも読んでいるのだろうか。 誰だろう、と確かめたいけれども何かとても気持ちが良く、起き上がるのが億劫だ。 思考回路が虚ろのまま、考える。 何かに包まれているように気持ちがいい。 何に? 何でもいい。このまま眠ってしまいたい。 ……私は今寝ているの? いつ寝たっけ? そしてまた、パラッと紙がめくれる音が聞こえてきて誰がいるのだろうかと外に向かっていく意識が徐々に覚醒してくる。 そして気が付いた自分の知らない匂い。 甘いそれは、どこか爽やかで落ち着く香り。 ゆっくりと瞼を開ける。 ぼやけた視界が映したのは白。 次第にはっきりと見えたそれはレース生地のカーテンのようなものだった。 自分の周りを囲う様に天井から吊るされ、認識したのは私がいる場所は天蓋付きのベットの上だという事。 だが私の日常に天蓋なんて物があるはずがなく、頭の中はすぐに疑問が占めた。 ここは何処だ?私はどうしてこんな所で寝ている? 疑問を解消する為、体を起こそうと力を入れるも異様に重く感じ、なかなか起き上がれない。 その時、起き上がる為に付いた左手に視線が向いて、手にかかる何かに驚愕した。 恐らくそれは髪。 自分の髪だ。 しかし普通は己の髪で驚く訳が無い。 異様だったのは、その色。 金色に輝くそれは、本来の己の髪色ではなかった。
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