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彼女との再会に、私は少々不安気に不服な声色を露とした。見つめる目の前に立つ機体を訝しげにも視界に映すと、次第に身体は震え出す。恐怖からなのだろうか、否や其れは戦慄さえもを覚える、語らう無表情のままの、ビスクドールに似た何かは虚ろな眼差しを天井に向けていた。
決して笑みを浮かべ無い、無表情のままに語らう。少女は自らの言葉を選び今声を出そうと、口をゆっくりと開きかける。軈て姫梨は静かに笑い、再び沈黙してしまう。何故未央と同じ姿なのか、しかし髪の毛の色だけは違っていた。一つの異なる点を除けば、周りからは気付かれないだろう。
黒髪は肩幅位に伸び、肌は不健康そうに見える程に白い。華奢な両手足からは関節部分にかけ、文字等が書かれていた。服装は中学の制服と、多少不思議な雰囲気を醸し出している様だがけっこう似合っている。けれど歳は、妹とあまり変わらないみたいだ。
「妖婉と言うか、何かさ。人間とは違うみたいね?」
「私は颯よりも、ずっと前に造られた。この入れ物には眠り姫が居る、姿は仮に過ぎない代物」
「どう言う意味?」
「コア(核)は私自身では無い、遠き昔に眠り姫は死んだ」
「姫梨、あなたは誰、どうして未央の姿だったのよ!」
壊れ狂った歯車は、止まる事無くただ何が間違っているのかさえ知らずに時を刻んで行く。少女は一人、生と死の狭間の中で永久に眠り姫を守る。単に其が役割だと信じて、過ちを犯して行ったのだろう。何人もの被験者を狩る、謂わば獣の様に喰らい続けた。
禁忌を司る、最早彼女は人類の脅威。若しくは、此の世の理を知る頭脳明晰な、機体。少女の姿は外見だけに過ぎず、優れた知識を持つ。果たして其れはどんな存在なのか、分かり得ない答えは知る術も無い為に全てが無情に思えた。だが私には探る理由がある、未央についてを聞き出す事が責めてもの労りになるからだ。
彼女は、此方の質問に対して小首を傾けるだけで特に変わった態度も見せず、話しを暫く聞いた後に何処かへ消えてしまう。矢先、姫梨は一枚の写真を持って戻って来ると其を私に差し出す。人差し指が、其を見る様に促していると察し、思わず苦笑を漏らした。
「……見ろって事?」
「其所に、未央と私が写ってる。右は眠り姫、彼女は古城の主……」
「未央、懐かしい。これまだ、小さい時じゃない……」
「懐かしい?」
「えぇ、とても……」
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