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そう、確かに私は現状を把握したのに。気付くと天井から淡い青の光が視界一杯に広がる、否や、其所からこの中学の制服を着た少女がゆっくりと落ちてきた。だが彼女を視て驚く、其があまりにも妹に似ていた為にはたとして見上げてしまうと同時に腕に人間の重味を感じた。
恐らくは目を見開き、自身はとてつもなく呆気に取られている事だろう。次第にある事実に対して狼狽して行く心境に思わず抱えていた人物を床に下ろす、そこに居るべき少女は必ずしも未央でなくてはならない。
なのに、彼女は妹と瓜二つの顔をした子だった。全く持って有り得ない状況に、姉の私はどうしたら良いのか酷く動揺してしまう。だが、早いところ此の場を立ち去る他無いと判断した。それはほんの一分足らずで出した、謂わば結論の、類いに近かったのかも知れない。
「未央、じゃない。誰なの?」
「……ん、私一体、ここは何処?」
「まさかあなた、記憶が無いの?」
「お姉様?どうして、だってそんな筈無いのに。お姉様は死んだ……」
「私は、鏡花よ。お姉さんって?人違いじゃないかしら……」
そう私が言うと、少女は訝しげに首を傾ける。顔をしかめて、自身の制服姿を奇怪気に見やっていた。そんな様子からして明らかに彼女は、別世界から来たように思える、だが何故こんな非現実的な事が起きたのだろう。確か、何者かの声がしてから急に皆が狂気した。
しかし、この子はやはり未央と似ている。まさかパラレルワールドから来た住人なのか、だとすれば本物の妹は何処に消えたのだろう。そして奇遇な事に、彼女には姉が居て死んだと言うが、まさに奇跡としか表し様の無い現状だった。
水色の制服に、赤いリボン。そして黒と、白のメッシュな入った髪は長さまできっちりと肩位に揃えられている。 黒目がちの瞳が何とも可愛らしい、だが階段から落ちた瞬間だとしたらこの少女はかなり高い場所から転落してきたと推測出来た。
「どうやって、此所まで来たの?」
「っ、判らない。気付いたら落ちてたから、私、どうして生きてたんだろ……」
「多分、こっちが咄嗟に受け止めたからでしょうね」
「お姉さんは、命の恩人だね。ありがとう!」
「今度は、間に合ったわ。あなたが無事で良かった、不思議だけど。初めて会った気がしないわね……」
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