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不思議な出会い、そして同じ境遇を持つ私達はこの日から互いを他人では無く本物の姉妹として接する事となった。お世話になっている母の姉、つまりは叔母さんには未央が消えた事実をこの方法で隠蔽する他なかった。こうして、学校は此方のお陰とも知らずに警察の目を逃れた。
しかし、この踊場階段で人が消える意味は一体何なのだろう。怪事件と噂があるも、どれも学校だけに限らず階段が関連している。恐らくは異界の様な入り口が、偶然にも開いたのかも知れない。奴等は無音のままに現れ、人を浚う。まるで透明人間が、行方不明者を連れ去っているかのようだ。
一度と消える、だが少女が降って来た例は今の所は無い。未央と瓜二つのこの子はまさか本当に妹の双子なのだろうか、けれど仮にそうだとすると血縁関係では私達は姉妹だった事になってしまう訳だ。ならば、何故今まで疎遠だったのか。
「そう言えば、まだ名前を訊いて無かったわね。差し支えがないのなら、教えて貰えない?」
「姫梨、紗己夜見ヒメリ。皆は私をそう呼んでいた……」
「さきよみ、変わった名前ね。じゃあ、二人だけの時は、姫梨って呼んでも良い?」
「構わないけど、人の前だと何て名前に変えられるの?」
「ニックネームよ?別に名前は変えたりはしないわ。とりあえず、未央って名乗って」
半ば強引にまくし立てる、そんな私に姫梨は苦笑を浮かべながら肩を竦めていた。 だが直ぐ様に同意したのか、彼女は顔をしかめつつも此方の意図を理解する。嫌々ながらにも、妥協をせざるを得ない事にこの子は気付いたのだろう。
その点に関しては、未央とは正反対の性格だ。妹はけっこうな単純屋で、損得を考えずに常に姉である私の言う事をきいてくれた。とは言っても、特に意地悪をしたとかでは無く信用深かっただけの話しだ。当然、彼女の合意の上だった。
純粋で健気、そして清楚な彼女はもう居ない。突然と目の前の少女と入れ替わったのだから、最早元に戻す方法は判らなかった。出来る事なら、妹を返して欲しいものだ。だが無理だと承知しているも、やはり何かが欠けた気分だった。
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