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「私この国が嫌い」
身長が150㎝にも満たない黒髪の少女が窓の外を遠い目をしてつぶやく。彼女の場合可愛らしいというよりも綺麗という言葉の方が適切だろう。
「お嬢様今何と?」
白と黒の侍女服(メイド服)を着た60代ぐらいの女性が紅茶を淹れる手を止め少女の言葉を聞きなおす。豪華絢爛な内装と美しく細かい意匠をこらしたデザインの茶器から相当高い身分のお屋敷だということが分かる。
「なんでもないわ」
少女は侍女の方に顔を向けずそのまま窓の外を見ていた。いつもと変わらない風景に少女は呆れ変革を望んでいた。立ち上る硝煙、血走った目の群衆、それを押さえつけようとする衛兵たち、本当に何年いてもこの国は変わらない。代り映えのしない毎日が退屈で見ずぼらしく、壊したいと思った。
「お嬢様お茶のご用意ができました。」
無機質な声、何の抑揚もなくただ淡々と発せられる侍女の言葉に少女は少しながら怒りを覚えそれを行動に移す。
「いらないわ、気分じゃないの」
白く細い腕で侍女より差し出されたカップを払いのけ、床に落とす。
パリンッ
甲高く不快な音が部屋中に鳴り響くのだった。
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