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結局そのままお互い無言になっちゃって
なんとなく気まずかった。
部屋に戻り荷物をまとめると、早速皐月を呼び出す。
口実なんてもうネタ切れで超適当。
だってこのままじゃ駄目だろう。
皐月にとって高校2年の夏休みは、絶対かげがえのないもので。
いつか大人になって思い出した時に
楽しかったと思ってもらいたい。
俺の事も、たまには思い出してくれたらいいな
……なんて、精一杯の綺麗事。
痛くもないのに高校生に湿布貼ってもらってご満悦なアラサーとか、犯罪だろ。
「痛っ!」
余計な事考えたバチが当たったのか
叩きつけるような痛みと同時に感じる冷たい感覚
優しく貼ってよって言おうと振り返ると同じタイミングで
「…っ、帰る」
ドアに向かって歩き出す皐月。
なんで突然帰ろうとしたのか、理由は分からないけど。
「あ、ちびすけ…、」
遠ざかる背中に思わず手を伸ばして引き留めた。
「…なに、」
行くなって、傍にいてよって
「…ごめん、何でもない」
そんな事、言えない癖に。
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