第19話

7/13
前へ
/172ページ
次へ
はぁ。 完全に自己嫌悪。 大切な事は何一つ伝えられずに逃げられた。 はぁ。 ベッドに座り深く溜息をついた時 また開かれた扉 驚いた表情を隠せずにいると笑われて 途端に照れくさくなる。 「…どした?忘れ物?」 また戻ってきてくれた事が嬉しくてぶっきらぼうな受け答えしか出来ない。 「いや、斗真がさ、鍵閉めたまま…寝たっぽくて」 わかりやすい嘘も、気付かないふり。 だってそんなの反則だろ。 可愛すぎる。 「ぅあっ、やめて…っ、やめっ」 気を良くしてうっかり白状したさっきの嘘に、激痛マッサージのお返しをくらって悶える。 痛いやめてと叫びながらも 皐月とこうやってじゃれるのは凄く楽しいから、本気でやめてなんて思ってないけど。 「なあちびすけ」 聞いた後どうするかなんて考えてないけど 「ちびすけの夢ってなに?」 普段は聞けないような事聞いてみる。 素直じゃない皐月も、今なら話してくれそうな気がしたから。 2学期になれば始まる進路調査 その頃には俺はもう、皐月の先生じゃなくて。 机に向かい合って座って、将来の事を聞く そんな時間は、俺にはないから。 だから、聞いておきたかったんだ。 俺が居なくなった後の 皐月の、未来について。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加