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「あぁ、心配だなぁ」
月曜日の朝。
昨日は梅雨らしい憂鬱な雨だったが、今は気持ちの良い青が広がっている。
露で緑が輝く一方、隣で歩く美子姉さんは起きてからずっとこんな調子だ。
「私だけだったらどうしよう。でも栄子ちゃんも頑張っていたし……」
ぶつぶつ呟く姉さん。どうやら、栄子さんの結果はまだ聞けていないようだ。
ふたりが高校生最後の挑戦と言って、受けに行ったオーディションの一次選考結果が届いたのが昨日。
美子姉さんも、栄子さんも、ひたすらに同じ夢を追いかけている。
ここ数か月は朝も昼も放課後も、学校の屋上で一緒に練習していたのを私は知っている。
「美子ー!」
後ろから、栄子さんの明るい声が聞こえた。
途端に変わる姉さんの表情。
ふたりの、赤いお揃いのお守りが一瞬煌めいた気がした。
駆け寄るふたりの顔に写っていたのは、希望に溢れた綺麗な笑顔。
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