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ふわりと揺れたスカートから覗くフリルのパンツ。藍色のそれを、僕はいつの間にか見慣れてしまったらしい。
何とも思わないのかと言われれば、それは勿論何かは思うが、何と言えば良いのか。やはり、何度も見ていると、有り難みみたいなのが無くなるんですよね。
「あの」
「んー?」
「貴女は何度言えば理解しますか?」
「何を?」
「スカートで浮くと中が見えると」
「パンツは見せるためにあるから」
「その考えは今すぐ改めなさい」
僕の目の前でフワフワと浮く彼女は、楽しげに目を細めて、ゆるりと笑う。それに、僕は溜め息をついた。
何故、彼女が浮いているのか。それは、彼女が超能力者だとか、彼女の周りだけ重力が無くなっているとか、そんなあり得ない理由ではない。それはいたってシンプルなもの。
「だって、幽霊のパンツなんて見て、興奮する人なんていないじゃない?」
「そういう問題ではありませんよ」
そう、彼女が幽霊だからだ。
僕に霊感なんてものは無く。生まれてから25歳という年齢になるまで、幽霊なんて非科学的なものは見たことがなかった。彼女に会うまでは。
しかし、別に僕の中にあった隠された力的なものが目覚めたとかではない。現に、彼女以外にそういった類いのものが見えることは、今のところ無いのだから。
何故、彼女だけが見えるのかは、いまだに分からないし、分かる日も来ないのだろうけれど、困らないので別にいい。
「ねぇ、暇~」
「知りません」
「ひ~ま~」
「…………」
「ひ~ま~♪」
「何故歌う」
「お出かけ!」
つい反応してしまった僕に、彼女は嬉しそうに笑う。それに、思わず舌打ちをしてしまった。
「舌打ち~♪」
「分かりましたから、今すぐそれを止めなさい」
「やったね!」
してやったりと言う顔で、彼女はくるくると宙返りをする。
僕は、折角の休日が潰れたと、読んでいた本を閉じて、溜め息を吐いた。
******
町に出た瞬間から、あれが可愛いだの、これが着てみたいだのと、落ち着きなくウロウロする彼女を横目に、僕はゆったりと歩く。
もしも、万が一にでも、有り得ないだろうけど、見られては困るので、外で浮くなという僕の言い付けは、しっかりと守っているらしい彼女は、地面に足が着いている。ように、見える。実際は着いていないらしい。
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