彼女について

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「本当に? 成仏出来るの?」 「な、何だ?」 「嬉しそうですね?」 「うん!」  彼女は、変わっている。彼女は、成仏する方法を探しているのだから。 「まぁ、頼まないんですがね」 「何で!?」 「痛いですよ。たぶん」 「え~……。でも、成仏できるなら」 「成仏ではなく、消滅なのでは?」 「それは、無理かな」 「そういうことなので、お疲れ様です」 「え? ちょっ、待ちなさい!」  後ろから掛かる僧侶的な人の制止の声を無視して、歩きだす。 「このまま放っておくと、大変な事になりますぞ!」 「はいはい」 「何故、その霊に肩入れする!?」  その問いに、仕方がないので立ち止まる。顔だけ僧侶的な人に向けて、目を細めた。 「独りは寂しいと、泣くもので」 「は?」 「さようなら」  今度こそ、家へ向かって公園を出た。 「ねぇ、」 「何ですか?」 「本当に私が成仏する方法、探してくれるの?」 「勿論ですよ」 「ふーん?」  あの僧侶的な人か言っていた“大変な事”とはいったい何なのか。彼女が、悪霊にでもなって、呪いで僕が死ぬとか?  まぁ、それでも僕は構いませんけどね。彼女とずっと一緒にいられるなら。 「何笑ってるの?」 「いえ、何でも」  こんな事を思い始めている僕は、既に呪われているのかもしれません。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加