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「ち、ちがわい!怪しい奴がいたから、話を聞こうとだな!」
さっきまでの勢いはどこへやら。
オロオロと言い訳を連ねる姿は、少し可愛くもある。
「どうだか~。ソイツ、珍妙なナリしてるが、綺麗な顔してるぞ!
悪いこと考えたんじゃないのか~?」
ハハハと笑われる文左衛門。
思うに、ここでの彼の立場はあまり高くないのだろう。
そして、今、私を綺麗と言った子は、見る目がある。
「や、ほんとに……」
なおも弁明を続ける文左衛門だけど、それは突然に中断を余儀なくされる。
いや、中断せざるをえない。
子供達の笑い声を引き裂くけたたましいサイレン。
明らかに場違いな、かん高い音に子供も大人も一瞬固まると、すぐに我先にと一直線に走り出した。
「え、え?」
サイレンにも驚きだけど、我先にと走り出した人々の様子に驚いてポカンとしていると、再び文左衛門に腕を掴まれた。
「なにしてる!?お前も来い!空襲だ!」
は?空襲?
聞き覚えはあれど、馴染みのない単語。
それでも、文左衛門に無理やり引っ張られて、私は旧校舎の一角にポッカリと空いた地下への入り口に押し込まれた。
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