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そんなとき、ふと壁にある小さな書庫が目に入る。
おもむろに中の一冊を手にとってみれば、表紙には英字。
「シャーロッ……」
「わ、わぁぁ!」
突然叫びだした文左衛門が、私の手から本をひったくる。
「お、お前英語が読めるんかよ!」
何をそんなに動揺しているのか、大事そうに両手で本を抱え込んだ文左衛門。
大柄な体格にそぐわない、怯えた目は、ちょっとギャップ萌えで可愛いものがある。
「なによ?コナン・ドイルでしょ?エロ本でもあるまいし、隠さなくてもいいのに」
「ば、バカ!ここにいるやつはいいけど
、兵隊さんに見つかったら、非国民って言われんだぞ!」
非国民?外国の本を持ってたぐらいで?
「というか、読めるということは、お前も敵性語がわかるのか?」
「敵性語、がちょっとよくわからないけど、英語ならけっこう出来るわよ?」
「そ、そうか」
しかし、人の本棚を覗くという好奇心に駆られた私は、文左衛門の返事を待たずにさらに物色を続ける。
「や、やめろよ!」
もはや悲鳴に近いものをあげる文左衛門を無視して、本の題名をむさぼる。
『ドンキホーテ』に、『トム・ソーヤー』、おやおや『ギリシャ神話』なんてのもある。
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