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「へぇ、読書家なんだ」
ところ狭しと並ぶ、様々なジャンルの海外の有名な書籍の数々。
思わず感嘆の声が漏れるなか、他の本とは異なる、簡素な、それこそ、ただ紙を綴じただけのような一冊を見つける。
これは?
気になって手にとろうとするも、今度こそ文左衛門に手を掴まれる。
「そ、それだけは勘弁」
懇願する文左衛門。
さすがに、ちょっと気が引ける。
大人しく手を戻すも、彼の敵は内部にいたようで。
「それ、文左衛門が書いてたショーセツだよ」
小さな男の子が大きな声で言ってしまう。
青ざめる文左衛門だけど、周囲からは特に空気の変化はない。
おそらくだけど、彼が知らないだけで、公然の秘密のような状態なのだろうか?
「そんな隠さなくても、自信を持って発表しちゃえばいいじゃない?」
「そ、そんなことしたら、絶対に兵隊さんに殺されちまう」
恥ずかしくて死ぬとかじゃなくて、兵隊さんに。
比喩じゃなくて、本当の意味での『死ぬ』
身近に感じたことのない単語に、やはりここは違う時代なのだと実感する。
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