新設校の旧校舎

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どうすれば元の時代に帰れるかな? 一度寝て、次に起きたら戻ってたらとも思うけど、そんなに甘くはないだろう。 でも、色々な事がありすぎて、パンクしかかった頭は休息を求めていて、少しずつ瞼が閉じようとする。 「お、おい。こんなとこで寝るなよ! 風邪ひくし、それに、ほら!もうすぐ飯だぞ! なんと、今日は収穫日だったから、腹一杯に食える!」 言われて、私のお腹が情けない音をたてる。 そして、鼻孔をくすぐる美味しそうな匂い。 かなり薄めだけど、この香りはカレー。 なんとか瞼をこじ開けて見た先では、お鍋からもくもくと白い煙が立ち上っている。 「あぁ、美味しそう」 呟いたのもつかの間。 事態の深刻さを一瞬で理解できたのは、ドジっ娘の私にしては称賛に値するだろう。 「ま、待って!すぐに火を消して! こんなところで火を焚いたら、不完全燃焼しちゃう!」 「は?ふかんぜん、なんだって?」 「とにかく消して!それと、換気しないと。 出入り口を開けて!」 「今、火をいれたばかりだから消せないし、今、出入り口を開けたら焼夷弾に焼かれて死んじまうぞ!」 慌てて出入り口にかけよれば、重い扉越しに大きな音が聞こえる。 確かにどうなるかわからない。 なら、せめて火を。 すでに、あちこちで煙にむせかえっている子がいる。 「ゲホゴホ。にいちゃん苦しいよ」 「ゴホ、ちょ、ちょっと火を消すか?」 ようやく消された火。 少し煙を吸ったものの、おそらく大丈夫だろう。 しかし、失った酸素は取り戻せない。 そして、換気は出来ない絶望的な状況。 少しずつ、再び瞼が下がり始める。 ただし、今回のはただの睡眠じゃない。 二度と起きること叶わない深い眠りへと誘う危険な眠り。
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