第二章【美食研究会】

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 ――○――○――○――   『ねえ、修二郎君。私たちが出した宿題の答え……わかったかな?』  フィンチで仁神彩月の件があった後。  俺は鳳かざみを彼女の家まで送り、自宅へと戻った。  現在時刻は夜九時。  夕餉と風呂を終え、宿題及び授業の予習復習が終盤に差し掛かった頃合いとなる。  学習机の上で充電されていた携帯が震えるのが気になったので手に取ってみると、その発信先が桐野氏だった。  仮に我が姉からの発信ならば無視を決め込むところだが、桐野氏は姉と違い気遣いの出来る女性なので受話器を取った。 「自分の料理を作る。そう聞きました」 『誰に?』 「加治木冬弥氏にです」 『加治木さん? 修二郎君、面識あったっけ』 「御崎美鶴という同級生と交友関係にある。だから……」 『そっか。まさか、私たちにこの問題を出題した人からヒントを聞くなんてビックリ』  耳がピクリと動く。  ふむ、つまるところ猪谷氏と桐野氏は、加治木氏に同じような問題を出されたというわけだ。  だが、問題を出された経緯が気になる。 『私と剛健ね。あの人に謝らなきゃいけないことがあってね。それで、ごめんなさいしに行ったんだ。その時に言われたんだよ』 「何を?」 『面白い料理を作ってくれるかな。僕はそれを君たちの気持ちとして受け取る。事の重大さを考えればこの程度じゃ済まないことだけれど、もし後ろめたい気持ちがあるなら挑戦してみてよって』 「結果はどうだった?」 『合格点貰うのに時間が掛かったよ。だけどね……凄く楽しかった。剛健ってば、最初にボツ扱いされたジュレラーメンを何度も何度も工夫しちゃってさ』  同じものを出し続けたのか?  それはつまり、間違いだと否定されたものを正しいと言い張ったことと同義ではないのだろうか。
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