第二章【美食研究会】

18/22
前へ
/207ページ
次へ
 親友と呼んでくれたのに、こういった仕打ちをする。  御崎嘉菊はそういう男である。  もっとも、自分で「性格悪いのが俺の長所」と言っているぐらいなので仕方がないのだが。  弟が駄目ならば兄だ。   御崎美鶴に相談をしてみよう。  メッセージを入力して送信。  内容としては『肉、魚介類、野菜、卵。どの料理を桜庭に作らせるべきか』といったものだが、 『さかな』  ものの数秒もせずに返信が来た。  変換せず平仮名三文字のメッセージが画面に表示される。 『なぜかというとしゅるいがほうふだからだ』 『にくさかなやさいたまご。おおくいえるのはさかなとやさい』 『ただし、ぶらんどやひんしゅはのぞく』  ブランドを除外した状態でそれぞれの素材を思い浮かべると、一番多くアイデアが浮かぶものは魚介類か野菜だろう。  肉は牛、豚、鳥、山羊、羊、鹿、猪、兎。  卵は魚卵を除くと鶏卵とアヒルの卵ぐらいだろうか。 『りょうりのしゅるいもほうふであじもたしゅたよう』  焼き魚と生魚の違いか。  あとは燻製や干物といったところだろう。     確かに魚ほど味が大きく変わるものはない。  流石は御崎美鶴だ。 『感謝する』 『どういたしまして。じゃあ、おおとりとはなすからはなしはここまで』  御崎美鶴に感謝の気持ちを送ると、鳳かざみと話がしたいという想いをぶつけられた。  よほど好きなのだな。  惚れた腫れたに疎い俺でもわかるぐらいに。  そういった気持ちを持っている彼を応援したい気持ちはあるな。  文字を目で追いながら笑っていると、   『鳳。じつは嘉菊から沼津の水族館のチケットを貰ったのだけれど、もし予定が空いてたら二人で行かないかな? チケットは二つしかないからみんなには内緒にしてほしい。返事はいつでもいい、待ってる』  俺のところにデートの誘いが届いた。  先程の全部平仮名とは打って変わって、真面目な長文である。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加