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鳳の言葉を耳で拾った御崎美鶴が、照れくさそうに頬を掻く。
「だから、わかるんだ。御崎君って弟さんと一緒にいたら見栄張っちゃうでしょ?」
「そんな事はない。僕はただ世間知らずの愚弟に身の程を知らしめる為にだな……」
「そういう御崎君を知れるのは確かに嬉しいんだよ。でもね、それよりも私は御崎君の事が知りたいです。美鶴お兄ちゃんじゃなくて、同年代としての御崎美鶴君のことを知りたいです」
きっとサツキちゃんも同じ気持ちだと思う、と鳳かざみが告げた。
まさに天啓が如き文脈であった。
「だから御崎君。サツキちゃんに中須賀君の事を調べさせてあげて? きっと、サツキちゃんは同級生としての中須賀君の事を知りたいはずだから」
「にゅっ……!?」
赤面状態になった御崎美鶴が狼狽したかのように身を縮ませる。
「そ、それは……鳳は僕の事が好きだと……遠回しにそう言いたいのか?」
「ちがっ……じゃなくて、わ、わからない。そう、わからないの。だから、もっと御崎君を知りたいの。きっとサツキちゃんも中須賀君に同じような気持ちを持ってるんじゃないかな? 持ってないとしても、誰かと仲良くなれることにデメリットなんてないでしょ? だ、だから……ね?」
「確かに、一理あるな」
しばらくの間、鳳かざみの話を黙して聞く御崎美鶴。
長髪から時折覗いた瞳は、何かに忠誠を誓う騎士のような気高さと誇らしさを兼ね備えた、強い意志の顕れであった。
「中須賀に命令する。仁神と有意義な時間を過ごせ。後で仁神の良さを作文にして持って来い。君の弟と妹は面倒を見てやる。主に嘉菊が」
実弟の扱いが酷すぎる。
恐らくあの御崎嘉菊ですら動揺するであろうことを御崎美鶴が言い放ったことに対して、開いた口が塞がらない。
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