第三章【かっこいい】

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「はい、承知しました」  承知していいのか!?  中須賀玄馬よ、少しは否定すべきだぞ。 「よし、これで一件落着だ。全ては嘉菊が解決してくれる」 「お、弟さんに丸投げしちゃダメだよ? 中須賀君、もしも御崎君と弟さんだけで面倒を見るのが大変なら、私も手伝っていいかな?」 「は、はい。でも、いいんですか? 姐さんと兄貴ですら手を焼くのに」 「二人とも……子供苦手そうだもんね」 「苦手じゃない。相手が論理的思考を持っていないだけだ」  御崎美鶴の言葉を聞いて、鳳かざみの予測が正しいと確信する。  親友の嘉菊は大人を相手取って交渉するのは得手だが、子供と仲良くする姿を想像することは非常に難しい。  一方、御崎美鶴はご覧の通りである。  この態度からどうやって子供と仲良くできるという可能性を見出せというのだろうか。 「まあ、それもいいだろう。中須賀のきょうだいの面倒を見るということは、食育というテーマには持って来いだ。美食研究会全員で携われば、僕の負担も減るし一石二鳥だ」  美食研究会ということは、桜庭日和も含まれるということか。  ただでさえ取材が近くて悩んでいるのに負担をかけるのは酷だ。  後で御崎嘉菊に相談しておこう。 「映画を見たらすぐに帰るようにします。それまでは、ご迷惑をおかけしますね」 「ううん。それよりもサツキちゃんと見る映画の事を考えた方がいいかも。もし思いつかなかったら……放課後に一緒に帰りながら決めるとか……あ、我ながらいいアイデアかも!」 「俺としても、鳳さんの言う通りに動くしか無いですね。女子が見たい映画というものがわかりませんし、同じ女性として見たい映画は何かというのを鳳さんに聞くと……ね?」 「あ……あはは、うちの御崎君がごめんね」 「お、鳳の僕……僕は鳳のモノ……嬉しいけれど、複雑だな」  もじもじしている御崎美鶴は、もはや鳳の為すが儘だ。  つまり、仁神陣営に与する者は当人を含めて四人となったわけだ。   なるほど、鳳かざみにスパイをさせることで美食研究会から支配するという仁神彩月の画策が実現する日は目前というわけか。
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