第三章【かっこいい】

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 ――●――●――●――  また放課後が来た。  でも、料理はいまだに思いつかない。  もったいないという仁神さんの言葉を何度も思い出しながらノートに絵を描く私は、全力で迷子中。  だって、普段はレシピ通りしか料理しないもん。    普通は使わない部分の再利用といえば何かな?  卵の殻、バナナの皮、梅干しの種、パイナップルのヘタ。  ……どう使うの!? 『おーい日和。今日はパイナップルの再利用法を実践したんだ。なんと、果肉を多く切り取ったパイナップルのヘタは挿し木するとまた生えてくるんだ! 食べ放題だぜ!』  違う! そうじゃない!!  心の中に出てきたかきちゃんへ全力でツッコミを入れた。  こういう時は御崎ちゃんだ。  ジョイントで聞いてみよう。 『料理で使わないものの再利用方法ってなにかあるかなぁ($・・)?』 『根性で食べる』  違うよ!! そうでもないんだよ!!  食べる人が根性で食べる時点で、それはみんなを笑顔にできてないもん! 『あ、今日は鳳とデートだから邪魔しないでくれ。頼む』 『わかった! がんばってね!』  うわぁ、やっちゃった。  これ、もう返信できないやつだ。  もうダメだーーーーーー!!!!   さすがに猪谷先輩や桐野先輩は試験管だから教えてくれない気がするし、取材に似合う料理を作るための時間を考えると制限時間はどんどん短くなってるし、もう絶望的。  今日はダメだ……もう、帰るしかないなあ。  お母さんなら食べ物のリサイクルとか詳しいかな。  このまま考えてて本番に間に合うのかな……。  胸いっぱいの不安が押し寄せてくる。  そんな時だった。   「桜庭日和」     弱々しい男の子の声がした。  間違いなくシュウくんだ。  もしかして、私のお手伝いをしてくれるのかな?
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