第三章【かっこいい】

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 なんて、期待しちゃダメだ。  特にシュウくんは料理部入部試験で色々と協力してくれたのに。  だのに、手伝ってもらおうなんて虫が良すぎるよ。 「ユダから話を聞いた。桜庭を手伝ってくれと……」 「湯田さんが? で、でも、この間は湯田さんのこと知らないって」 「か、帰り道で偶然にも会った。か、彼は非常に好戦的かつ挑戦的。故に自分を挑発してきた」  言葉を何度か詰まらせながら喋る。  何を喋るかを選んでいるのかな?  そんなに気を遣わなくていいのに。 「ユダ曰く、桜庭に協力できなければ自分は劣等生なのだそうだ。彼はどうやら自分を試して……いる」  湯田さんがシュウくんと対立した。  そういうことでいいのかな? 「桜庭日和。面白い料理を作るんだろう? なにか、こだわりはないか?」 「こだわり?」 「た、例えば……なんでもいいんだ。好きな食べ物でもいい。あと、作りたいもの、味付け……」 「ご飯が好きだよ! なんにでも合うよね!!」 「ぬ!?」  私の声にビクッとするシュウくん。  そんな大きな声を出したつもりはないんだけどなあ。 「さ、桜庭……ち、近い。色々と近い……」 「え?」 「君は女の……子だ。もっと、男子とは距離を……取ったほうがいい」 「あ、ご、ごめんね!」  シュウくんの真っ赤な顔に気づいて思わず離れた。  女子って意識されたことってあんまりなかったから新鮮だなあ。    そういう風に思ってくれるのはちょっと嬉しい。  だけど、気まずくなって話しづらい雰囲気になっちゃった。  うーん、どうしよう。  これ、絶対に私から口を開かないと無言が続くパターンだよね。
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